ゴムや樹脂内に金属製のワイヤーを入れることによってその形状を保つラインにおいて、定位置に移動させつつ、カットする工程は、その製品の性能を左右する工程となる。連続ラインの場合には、フリー-ロールで押しつけながら動力ロールで搬送し、糸道ガイドでその位置を決定しています。 その為、動力側のロール上で、ワイヤーはサイドにずれながら移動し、上から押しつけられるという軸方向と、横方向の摩耗が発生することとなります。また、同時にワイヤーの性質によっては、振動が発生し、はねることで摩耗がおき、表面処理が摩耗又は、剥離する状況がありました。
・上記、軸方向のズレ、横方向の滑り、縦方向の振動により、環境が厳しく表面処理が剥離する状況がありました。
・例えば、ワークを確認したところ、コーティング系の表面処理では、摩擦係数が高すぎて、ワイヤーが「ばたつく現象」が発生していることを突き止めました。また、フリーロールの加重によって、母材料に数ミクロンの凹みが発生した場合には、母材料との硬さの差が大きいために剥離してしまう状況が散見されました。次に、溶射系の処理では、縦方向の振動に対し、密着力が対応できずに、剥離をするという状況が散見されました。これは、上記のようにワイヤーが「ばたつく」場合には、フリー側のロールを必然的に強い圧力で押さえる必要があり、その圧力によって、剥離してしまうという状況であることが発見されました。
そこで、ダイクロンの密着力が高いという性能を利用して、問題を解決しました。先ず上記のような凹みが発生しないことは、大前提であるので、母材料の変更を共同で行いました。その次に、この理由により、一般的には50μ以上の膜厚を確保することが常識であるこの様なロールで、ダイクロンの施工を20~30ミクロンに変更しました。それは、母材料との硬さの差によって、発生する剥離を抑制することと共に、50μ以上施工することによって行われる「追加工」を削減し、トータルのコストを抑える試みを行いました。ローラーの多くは幾何学的な公差を設定されていますので、それらをクリアする手段として、厚めっきを施工し、仕上げ研磨を行います。しかしながら、加工の工数を減らすために、母材表面を公差より粗く作成し、厚めっき後に仕上げ研磨で精度を保とうとする向きもございます。しかし、圧力が高い場合には、この手法ですと、剥離をしてしまうという現象を突き止め、精度の高い母材料で、膜厚を下げて、幾何学交差に入れていくことを提案致しました。