湿式のめっきの中で、ニッケルを含む金属を析出させるモノの総称。機能を持つ(装飾は含まれないという意)のなかで、最も主力であり、多種多様なめっき手法が存在する。
また、電解、無電解の双方で析出させることが可能であり、応用範囲は多い。
多種多様なめっき手法があるが、Niについては、電解及び、無電解のめっきが施工されることが多い。そもそも無電解めっきとは、イオン化傾向の差(下図を参照)を用いて、イオン化した金属を析出させる手法である。
水に硝酸銀(AgNO)を溶かした水溶液に鉄板を漬けると、銀よりイオン化傾向が大きい鉄が水溶液中に溶け出し、水溶液中の銀イオンが鉄板の表面に析出してくる。
このとき、銀イオンが鉄から電子を受け取ることで銀に還元され、 鉄は陽イオンになって水溶液中に溶け出している。
表面が銀で覆われるとそれ以上反応は進行しないので 厚いめっきが出来ない。 この様な作用を使って行うのが、化学めっきであり 無電解めっきであると言える。
ニッケルめっきは、1900年代になり有用性が見いだされ、 工業化が進んだ。
すなわち非金属にもめっきが可能で、 めっき膜は熱処理によって硬度が上昇して耐摩耗性が得られることが特徴である。 (”初めての表面処理技術”仁平宣弘、三尾淳著:技術評論社編より)
実際に行われている化学反応は以下の通りである。
NiS04+NaH2PO2+H2O→ 2NaH2PO3+H2SO4+Ni+H2
これと同時に、この様な反応も起っている。
NaH2PO2+1/2H2O →NaOH+P+H2O
つまり、無電解ニッケルめっきとは、ニッケルリンめっきであるとも言える。
筆者自体は、機能めっきの中でも耐摩耗分野にしか知見がなかったのだが、最近学習した中では、そのリンの含有量をコントロールすることによって、電磁特性を変化させる等という事も行われており、その硬い被膜という特性以外にも、 その付き回りの良さから多くの表面処理の下地として電気的特性を付与するなど、数多くのバージョンがある。
その一部をご紹介したい。
黒ニッケル:ニッケルめっきに装飾性を加味したモノ。付き周りもよく高級感が出ている。
電解ニッケル:上記のような無電解ではなく、電解めっき(クロムの章参照)でニッケルを析出する手法。析出する厚さをコントロールすることが可能であり、そのもので硬さを出すことも可能である。
合金めっき:ニッケルめっきを合金の一つとして析出させるめっきが散見することが出来る。ニッケル以外の金属を含有させることによって、導電性や耐食性等を向上させているモノが多い。 株式会社特殊鍍金化工所のTMXが有名。
多機能性電解及び、無電解めっき上記の手法の他にPTFEやSICなどを含有させることによって、
飛躍的に摩擦係数を減らすめっきも存在し、その可能性は無限であると言えます。