ダイクロンは独自開発の混合触媒を用いることにより、母材との密着性が非常に高く、水素が吸蔵されにくいめっき皮膜を形成します。(水素吸蔵がゼロにはなりません) 一般的なクロムめっきは他のめっき処理の中でも、とても水素を吸蔵しやすいめっき処理といわれています。それはクロムの電流効率が悪く、大量の水素発生を伴ってめっきが析出していくためだと考えられます。したがってクロムめっきの水素ぜい化率は80%以上と、材料を曲げると剥離やクラックが生じるのが通常です。
水素ぜい性とは、「めっき前処理及びめっき処理の過程で、被めっき物(母材)が水素を吸蔵して脆(もろ)くなる現象」を指します。(JIS H0400 電気めっき用語)。この現象はめっき処理だけに起きる現象だけではなく、鉄鋼材にも「水素脆性」という言葉が規定されています。(JIS G 0201鉄鋼用語)。つまり水素ぜい性とは、金属材料が水素によって脆くなったり、めっきが剥離したりする現象を指します。
水素原子は原子の中で最も小さいことから、容易く材料内に侵入していきます。水素が侵入する経路としては①表面処理の工程と、②大気や水中などで腐食に伴って侵入する2つのパターンが考えられます。
①表面処理工程での水素侵入
表面処理工程では、表面の錆びや酸化物を除去する酸洗いで、材料と酸が反応して水素イオンの放電が起こり水素原子が発生します。このとき通常はH2となって大気中に拡散しますが、一部の水素は材料中に、また一部は素地とめっき界面のめっき皮膜側に水素が蓄積します。
②大気や水中での水素侵入
大気や水中での水素侵入は、材料自身または表面処理された材料が、実使用中に腐食されるときなど、水と材料が反応することによって生じた水素原子が材料中へ侵入します。