先週のラーメンの話は、今週の前振りでして。
たまには、本の話をしたいと思います。
最近でもないのですが、読了した本が此方。
資本主義に希望はある―――私たちが直視すべき14の課題 単行本(ソフトカバー) – 2015/10/9
フィリップ・コトラー (著), 倉田幸信 (翻訳)
単行本(ソフトカバー): 360ページ
出版社: ダイヤモンド社 (2015/10/9)
言語: 日本語
ISBN-10: 4478064881
ISBN-13: 978-4478064887
発売日: 2015/10/9
商品パッケージの寸法: 18.6 x 13.2 x 2.4 cm
です。
まあ、多くのレビューがあるので、内容をご説明しますと
現在、多くの本が資本主義について語っているが、
著者自身がそれらをより多く理解したこと。14の欠点が有ることを確信していること。その14の欠点を分析して、より多くの人を幸せにしたい。トマピケティーの「21世紀の資本」が指摘している資本格差の問題は、14の欠点の中の一つでしかないこと。そして、自分こそが新しい視点を与えることが出来るという確信から、この本を書かれたそうです。
大変興味深い視点としては
資本主義とは「私有財産」「契約」および「法の支配」と言う三つの基本概念が必要なモノであるという視点。なるほど、社会主義には私有財産がありませんし、資本主義は法の支配や契約無しには成り立ちません。それが、要素であることは、肝に銘ずる必要がありますね。。。。
そして、第13章で指摘している低成長グループの件。アメリカの将来について
機具しておられるのですが
1.人口の高齢化
2.教育成果の低迷
3.公的及び民間債務問題の解決に向けた緊縮財政。
4.医療とエネルギーコスト
5.グローバル化がもたらす圧力
6.所得不平等の拡大と債務負担
って、丸々日本のことかと思いました。先進国というわけではないですし(ドイツやフランスは違った状況であることは間違いないですし)まあ、「失われた20年」という話もございますが、そもそも、低成長グループなのであると。そう考えると政策や企業経営も変化してくるであろうと思いました。
また、この13章の中で「禅問答」のような議論が繰り広げられます。
非常に良いレストランがあったとします。そこで、オーナーに聞く訳です。「もう一件出さないの?」と。キャパが大きくなることは、サービスの劣化を招く可能性もありますし、お客様が増えるとは限りません。お店の増改築も同じ事が言えます。レストランの二件目を開く方が良いのか?それとも、小さく生きることを選択するのか?これは「それでは、正義の話をしよう」の議論にも似ているのですが、実際は企業経営上常日頃から議論になることでもあります。以前英語の通訳をしている友人を囲む食事会で、この話題を私が切り出したところ、それを聞いていた友人が「信夫!おまえは、今のままではダメだと言っているのか?価値がないと言っているのか?」と、いう様な議論をふっかけられたことがあります。僕は正直驚いて「そういうことを言っているのではない。どちらも正解でどちらも不正解。しかし、決めなければいけない瞬間が今だと思ったから聞いたんだよ」と、話したのですが、全くもって理解をして貰えませんでした。これは、そういった立場にいないと判らないのだと改めて感じた次第です。
話を戻しますと、この本の中では「資本主義」という考え方の上では、前者が是である訳ですが、これからの資本主義は後者もまた是になると。そうしないとおかしくなると論じています。全く同意見でした。
またこの本では
資本主義の十四の欠点」を挙げています。
1.資本主義は、根強く残る貧困の解決策をまったく、またはほとんど示せない。
2.資本主義は、所得と資産の不平等を拡大させる。
3.資本主義は、何十億人もの労働者に生活賃金を支払うことができない。
4.資本主義は、自動化の進展に直面し、人間の仕事を十分に確保できなさそうである。
5.資本主義は、企業活動による社会的費用の一部しか彼らに負担させない。
6.資本主義は、規制がなければ環境および天然資源を搾取する。
7.資本主義は、景気循環を生み出し、経済を不安定にする。
8.資本主義は、個人主義と利己主義を重視するため、共同体と共有資源を犠牲にする。
9.資本主義は、消費者に多額の借金を促し、結果的に製造業主導型経済から金融主導型経済へとシフトさせる。
10.資本主義は、政治家と企業を一致団結させ、彼らの利益のために大多数の市民の経済的利益を犠牲にする。
11.資本主義は、長期的な投資計画よりも短期的な利益計画にくみする。
12.資本主義は、製品の品質や安全性、広告の真実性、反競争的な行為に対する規制を必要とする。
13.資本主義は、GDPの成長だけを重視しがちになる。
14.資本主義は、市場の方程式に社会的価値と幸福を持ち込む必要性がある。第1章 貧困問題は未解決である
そして、最後に提案を幾つかしているのですが、ピケティー氏と同じく、決して十分な提案をしているとは思えませんでした。なので、その徒労感たるや半端がないのですが、それでも著者は言い切ります。「資本主義に希望はある」と。
疲れましたが、良い本でした。
それでは、失礼します。
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