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私と読書(実力も運のうち能力主義は正義か?)マイケル・サンデル (著)

実力も運のうち 能力主義は正義か? 単行本 – 2021/4/14
マイケル・サンデル (著), 本田 由紀 (その他), 鬼澤 忍 (翻訳)
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ハーバード大学のマイケル・サンデル氏の近書。「これから正義の話をしよう」のヒットに伴い、「白熱授業」と題したテレビ番組で、一斉を風靡した著者が選んだ今回のテーマは「能力主義」でした。
「王権神授説」や「カルマ」ではないですが、近代までの宗教観は、因果応報的な発想で、現状を認め田上で「来世は幸せになろう」「死語は天国に行ける」といったロジックでコントロールされていた歴史的なアプローチをした後に、プロテスタント教会や産業革命の社会と思想を紹介しながら、丁寧に現在の「能力主義」的な考え方についての説明がございます。

 

その発展系で、現在米国で多くの信者を抱えるが摂理主義的信仰である「繁栄の福音」の内容「頑張れば、豊かになれる」という発想に繋がっていると指摘しています。余談ですが、この摂理主義てきな信仰は「信仰を頑張れば、幸せになれる。現在不幸なのは信仰が足りないからだ」という所謂、新興宗教と旧来型の宗教との根本的な違いである事も指摘されていますし、とても腑に落ちる事がありました。詳細は省きますが「そんな、近視眼的で良いの?」と、個人的には思って居たわけですが、それらが多くの人に受け入れられる理由と、自分が受け入れられない理由もも理解できた次第です。

 

話は戻りまして、此れ等を前提にして「アメリカンドリーム」と呼ばれる自由が認められる経済ならば、立身出世が出来る国であることが、米国の求心力であったわけですが、それらがデータ的には虚構である事を指摘しています。本書によれば、それらを表す数値「経済的流動性」は、中国は言うに及ばず、ドイツ、スペイン、日本、オーストラリア、フィンランド、ノルウェー、カナダ、フィンランド、デンマークなどよりも低いことに着目しています。

 

また、米国民主党が「テクノクラート」的なエリートばかりが大統領候補になり、本来寄り添うべき「労働者」に寄り添って居らず「チャンスの平等」≓「今貧しいのは、頑張っていないから」というロジックを使いすぎている事が、共和党トランプ陣営の台頭を許したという手厳しい内容も書かれています。

 

19世紀の後半にハーバード大学大学が採用し、現在でも米国大学に入るための能力テストのSATも、本来ならば、学力よりもIQを問う設問であり、多様性を目指していたが、結果的にはそのスコアは親の収入と相関がある(対策講座を受けることで、スコアをアップすることが出来る)という事も指摘しています。

 

つまり、実力主義と言いながら未だに学歴によって、収入が変わる米国社会において、資産を受け継ぐことが容易に出来る税制と、寄付金によって入学や、マイナースポーツの優秀成績といったカネで変えるアクティブティーが評価させる現在の入学試験の方法は、結果的にアメリカンドリームを破壊しており、それが、それらに勝ち残った人たちにとっては「自分が優秀だから今の地位がある」という前出の状況によって、社会の分断が起きているのでは無いかという指摘になります。

そこで、著者が提案する改善方法は、”ある程度の学力があれば”「くじ引き」で入学を決める。。。。って、チョット弱い気がして、残念でした。

 

また、個人的には、本書の解説で書かれていることに大変興味を持ちました。それは meritocracy が、能力主義ではなく功績主義の誤訳であるという東京大学の本田先生の指摘です。多くの人事コンサルタントを名乗る人たちの理論や経営論を聞くにつれ、どうしても腑に落ちない点が多かったのですが、やはり、原書に当たると言いますか、言語の違いには気をつけないといけないと、改めて感じた次第です。

と、いうことで、私は能力が低いので、三ヶ月も繰り返し読み続けて、やっと理解して、読了した次第です。当分は学術書では無く歴史小説でも読もうと思います。

 

お勧めとは申しませんが、興味がございましたら、お貸しします!

それでは、失礼します。

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